2024年、世界の繊維生産は過去最高の1億3200万トンに達し、その59%をポリエステルが占めた。労働、水、プラスチック、廃棄物に及ぶファストファッションの請求書を精査する。
帳簿の規模
史上最も安い衣服が、最大の隠れた請求書を抱える理由
2024年、世界の繊維生産量は過去最高の1億3200万トンに達し、その59%をポリエステルが占めた。生産量はいまも増え続けている[1]。衣服はかつてないほど安く、豊富になった。そして値札に載らない費用は、いまや計測できるほどの規模に膨らんでいる✓ 確認済み事実。
本報告が検証する問いへの端的な答えはこうである。安い服が安いのは、費用の大半を買い手以外の誰かが支払っているからだ。ダッカの縫製労働者の法定最低賃金は月1万2500タカで、グローバル生活賃金連合が算定する同市での必要額の約41%にとどまる[2] [3] ✓ 確認済み事実。業界の温室効果ガス排出量は、算定範囲と手法によって世界全体の2%から8%と幅がある[4] [5] ◈ 強力な証拠。繊維廃棄物は年間9200万トンを超え[6] [7]、最も多く使われる繊維は化石燃料由来のプラスチックであり、洗濯のたびにマイクロファイバーを放出する[1] [8] ✓ 確認済み事実。いずれの費用もレジには現れない。本報告はまず、労働、水、化学物質、炭素、プラスチック、廃棄物という勘定全体を示す。続いて、各項目を加速させたウルトラファストファッションという事業モデルを検証する。さらにパリ、ブリュッセル、サクラメントで動き出した規制対応を追い、「持続可能」をうたう代替策について証拠が実際に何を語るかを確かめる。
出発点は量である。量こそがほかのすべてを動かすからだ。2000年から2014年にかけて、世界の衣料生産はおよそ倍増した。1人当たりの購入点数は60%増え、廃棄までに1着が着用される回数は36%減った[9] [10] ✓ 確認済み事実。エレン・マッカーサー財団の推計では、ほとんど着られず、リサイクルもまずされない衣服によって、毎年5000億ドルを超える価値が失われている[10]。業界全体を物量で示す最良の指標である繊維生産量は、2000年以降で2倍以上に増えた。2024年には前年の1億2500万トンから1億3200万トンに達し、現在の傾向が続けば2030年には1億6900万トンに届く[1] ✓ 確認済み事実。増加分は圧倒的に合成繊維である。合成繊維はいまや全繊維の69%を占め、2020年から9ポイント上昇した。一方で綿は19%まで後退した[11] ✓ 確認済み事実。
衣服を生産する国は、ごく少数に集中している。世界貿易機関(WTO)のデータによれば、2024年に中国は1652億4000万ドル相当の衣料を輸出し、世界全体に占める比率は29.64%に上った。これにバングラデシュの384億8000万ドル、ベトナムの339億4000万ドルが続く[12] ✓ 確認済み事実。依存度が際立つのはバングラデシュである。同国は縫製品で年間約550億ドルを稼ぎ、約3500の工場でおよそ400万人を雇用している[2]。消費側もまた集中している。欧州環境庁が2025年3月に公表したところでは、欧州連合(EU)の1人当たり繊維製品購入量は2019年の17キロから2022年には19キロに増え、過去最高を更新した[13] ✓ 確認済み事実。フランスでは2024年に35億点の新品繊維製品が販売された。国民1人当たり42点の新しい衣類に相当する[14]。日本では2024年、家庭が77万トンの衣類を購入し、48万トンを手放した[15] ✓ 確認済み事実。
業界を擁護する側は、安い衣服は福祉の真の向上だと主張する。この議論は真剣に受け止めるべきである。実質価格の低下により、かつては手が届かなかった家庭も多様な衣服をそろえられるようになった。さらに縫製品輸出は、かつて日本と韓国がそうであったように、バングラデシュ、ベトナム、カンボジアにとって工業化の最初の一段となってきた[12] ◈ 強力な証拠。しかし福祉論が扱うのは衣服の価格である。本報告が記録する費用を主に負うのは、その服を買いも売りもしない人々だ。ダッカ近郊の河川下流に暮らす住民、アクラの廃品回収者、チリ北部アルト・オスピシオの住民がそれにあたる[16] [17] [18]。こうした費用を除外した市場価格は、価値を測ってはいない。測っているのは、差額を誰に押し付けたかである。この区別は政策上きわめて重要だ。設計段階から低すぎる価格は、消費者の選択だけでは是正されないからである。
- 労働:主要生産国における法定最低賃金は、推計生活賃金のおよそ25%から50%しか賄わない[3] [19] ✓ 確認済み事実。
- 炭素:推計値は、2023年の9億4400万トン(CO2換算、アパレル・インパクト研究所)から、2018年の21億トン(マッキンゼーとグローバル・ファッション・アジェンダ)まで幅がある[4] [20] ◈ 強力な証拠。
- 水:2019年に国連機関が引用した数値によれば、年間約930億立方メートル[21] ◈ 強力な証拠。
- プラスチック:合成繊維から海洋に流出するマイクロプラスチックは毎年20万〜50万トン[8] ✓ 確認済み事実。
- 廃棄物:毎秒、ごみ収集車1台分に相当する繊維が埋め立てまたは焼却されている[22] [10] ◈ 強力な証拠。
これらの数字には実際の不確実性が伴う。誠実な帳簿であれば、それを明記しなければならない。ファッションが気候に占める比重は、一般の報道で誇張されてきた。「地球上で2番目に汚染度の高い産業」という主張には出典がたどれないことを、ニューヨーク・タイムズ紙が2018年に明らかにしている[23] [24] ✓ 確認済み事実。よく引用される「綿Tシャツ1枚に水2700リットル」もフットプリントの推計値であり、灌漑用水はその半分にも満たない[25] [26] ◈ 強力な証拠。つまり、出回っている最も劇的な統計の一部は、実態を誇張している。それでも、保守的に補正した数字でさえ、物理的な処理量が効率改善を上回る速さで増え続ける産業の姿を示している。アパレル・インパクト研究所のデータでは、2023年に業界の排出量は7.5%増加した。2019年に追跡を始めて以来、初の増加である[4] ✓ 確認済み事実。この帳簿に誇張は要らない。必要なのは会計である。
帳簿を閉じることがなぜ難しいのか。それを説明する特徴がもう一つある。費用が、互いを規制しない複数の法域に分散しているのだ。ポリエステルのワンピースを例にとろう。広州で検索データをもとにデザインされ、出来高払いの工房で縫われ、リヨンの顧客へ空輸される。数回着られたのち寄付され、ベルギーで梱包されてアクラへ送られる。アクラでは、毎週届く古着のほぼ半分が売れ残る[27] [28] [13] [17] ◈ 強力な証拠。どの段階も、行われる場所では合法である。供給網全体を見渡せる政府はなく、それを反映する価格もない。以下の各章では、この連鎖を一つずつたどる。まずは、その回転をかつてなく速めた事業モデルから始めよう。
ウルトラファストの機械
試しては繰り返す小売が、ファッションをデータ産業に変えた
香港上場に向けた書類によると、Sheinの売上高は2023年の321億ドルから2025年には418億ドルに増えた[29]。同社はファストファッションを発明したわけではない。速さを工業化したのであり、配送を支えたのは、関税の抜け穴だった✓ 確認済み事実。
ウルトラファストファッションは、ZaraやH&Mのファストファッションと一つの本質的な点で異なる。需要予測を取り除いたことである。従来型の小売業者は数か月前に商品構成を確定し、需要を読み誤った分は値下げで吸収する。これに対しSheinは、膨大な数の新デザインを掲載し、それぞれ100〜200点の初回生産を行う。そしてクリック数を見極め、売れた品だけを追加発注する[30] [31] ◈ 強力な証拠。分析会社エディテッドは2021年、Sheinのサイトで1日1000点を超える新商品を数えた。品ぞろえの70%が発売後3か月未満で、Zaraの53%、H&Mの40%を大きく上回った[31] ✓ 確認済み事実。ロイター通信は2026年、Sheinの掲載商品が200万点を超え、毎日約4700点の新しい衣料品を追加していると報じた[32] ◈ 強力な証拠。監査済みの日次集計は存在せず、民間の集計業者による推計も大きくばらつく。とはいえ信頼に足る推計はいずれも、Sheinの新商品投入ペースを先行企業より1桁高い水準に置いている。
このモデルは並外れた利益を生んできた。ロイターが2026年7月に報じたSheinの香港上場目論見書によれば、売上高は2023年に321億ドル、2024年に387億ドル、2025年に418億ドルだった。純利益は2024年に33億7000万ドル、2025年に20億6000万ドルである[29] ✓ 確認済み事実。もっとも、これらの利益額は、2024年の純利益を約10億ドルとしたフィナンシャル・タイムズ紙の2025年2月の報道とかみ合わない[33] ⚖ 議論あり。この食い違いについて公の説明はない。業界で最も重要な企業が、公開市場で資本を必要とするまで監査済みの情報をほとんど開示してこなかったことを、改めて思い起こさせる。争いのない事実は減速である。売上高の伸び率は2024年の20.7%から2025年には8%に落ちた。2026年1〜3月期には9900万ドルの純損失を計上し、前年同期の3億9500万ドルの黒字から赤字に転じた[34] ✓ 確認済み事実。
この因果関係は重要である。事業モデルがどれほど製造面の才覚ではなく、通関規則に依存していたかを明かすからだ。米通商法321条の下では、800ドル未満の小包は関税が免除され、検査もほぼ省かれていた。同規則による輸入件数は2015年の1億3400万件から2024年には13億6000万件超へと増え、1日あたり約400万件に達した[35] ✓ 確認済み事実。米下院特別委員会は2023年、米国に毎日届くデミニミス小包のうち、SheinとTemuの2社だけで30%超を占めると推計した[36] ◈ 強力な証拠。中国から消費者へ直接送ることで、両プラットフォームは、同じ商品を輸入する米国企業なら支払うはずの関税を免れた。米政府は2025年5月2日に中国・香港からの貨物についてデミニミスを廃止し、同年8月29日には全ての国へと対象を広げた[37] [38] ✓ 確認済み事実。それから1年足らずで、Sheinの米国売上高は減少に転じた。
欧州も、基準額こそ違うが同じ洪水に直面した。150ユーロ以下の関税免除制度を使ってEUに輸入された少額品は、2022年の14億点から2023年に23億点、2024年には46億点へ急増した。1日あたり約1200万個の小包であり、その91%が中国発である[39] ✓ 確認済み事実。フランスだけでも2024年に8億個の小包を受け取り、うち90%が中国からだった[40]。EU財務相理事会は2025年12月12日、150ユーロ以下の小包に含まれる商品1点ごとに一律3ユーロの関税を課すことで合意した。この措置は、本格的な関税改革までの暫定策として2026年7月1日に発効した[41] ✓ 確認済み事実。米欧いずれの政府も、免税小包は中立的な利便ではなく、特定の流通モデルへの補助金だったと結論づけたのである。
ウルトラファストファッションの採算は、技術ではなく政治に由来する三つの条件に依存していた。関税のかからない小包、個人宛て貨物に対する緩い検査、そして商品が安全規則や労働規則に違反してもプラットフォームがほぼ責任を負わない仕組みである[36] [39]。2025〜2026年の関税改正で、一つ目の条件が消えた。Sheinが四半期赤字へと急転した速さは、供給網の卓越性に帰されてきた価格優位が、実は通関上の計算に負うところ大であったことを示唆している[34]。
このモデルがいかに素早く模倣されうるかを示すのがTemuである。PDDホールディングス傘下の同プラットフォームは自社単独の業績を開示していない。2024年の流通取引総額(GMV)について民間の推計は約540億ドルから700億ドル超まで幅があり、ファッションは売上の41%と推計される[42] ⚖ 議論あり。米下院委員会は2023年、Temuが供給網の監査を一切行っておらず、新疆で製造された商品の出品を第三者販売者に明示的には禁じていないと指摘した[36] ◈ 強力な証拠。欧州委員会は2025年7月、自社市場での違法商品リスクを適切に評価しなかったとして、Temuがデジタルサービス法(DSA)に違反したとの暫定判断を示した。違反が確定すれば、世界売上高の最大6%の制裁金が科されうる[43] ✓ 確認済み事実。両プラットフォームは品ぞろえと価格で競い合う。そしてどちらの変数も、確認を最も怠る出品者に報いる。
- 速度:顧客データから新デザインまで最短3日。従来型ファストファッションの追加発注では数週間を要する[31] ◈ 強力な証拠。
- ロット規模:初回生産は100〜200点で、需要があれば追加発注する。プラットフォーム側の売れ残りは最小化されるが、総生産量は減らない[30] ◈ 強力な証拠。
- 流通:中国から個人の買い手へ小包を直送する。関税は米国で2025年まで、EUで2026年7月まで免除されていた[37] [41] ✓ 確認済み事実。
- 価格表示:フランスでは、Sheinが宣伝した値引きの57%が実際の値下げではなく、11%は実のところ値上げだった[44] ✓ 確認済み事実。
試作と追加発注を繰り返すこのモデルは、従来型ファッションより無駄が少ないと擁護されることがある。小ロットであれば、シーズン末に廃棄される売れ残りが減るからだ。この議論は軽視できない。予測頼みの小売では過剰生産が現実の費用であり、EUが2026年7月19日から大企業による売れ残り衣料の廃棄を禁じたのも、まさにそれが広く行われていたからである[45] ✓ 確認済み事実。しかし、デザイン1点当たりの無駄を減らしても、デザイン数や購入数、小包の数がはるかに速く増えれば、無駄の総量は減らない。Shein自身の排出量は2022年から2023年にかけて917万トンから1668万トン(CO2換算)へとほぼ倍増した[46] ✓ 確認済み事実。1点当たりの効率と、点数の増加とは、別々の帳簿であり、後者が前者を圧倒してきた。
2013年4月24日、ダッカ郊外サバールにあるラナ・プラザが崩壊した。ビルには五つの縫製工場が入っていた。死者数は、後日の死亡や集計方法の違いにより1131人、1134人、1138人と諸説あり、負傷者は2500人を超えた[47] ✓ 確認済み事実。前日には建物にひびが見つかっていた。クリーン・クローズ・キャンペーンによれば、労働者は賃金を失うと脅されて翌朝職場に戻るよう命じられ、少なくとも29の世界的ブランドがこれらの工場から調達していた[47] ✓ 確認済み事実。この惨事は、少なくとも112人が死亡した2012年11月のタズリーン工場火災に続くものだった[47]。二つの惨事は、業界の近代史上最も大きな改革をもたらした。ブランドと労働組合の間で結ばれた、法的拘束力をもつ安全協定である。
「アコード」と呼ばれ、現在は「インターナショナル・アコード」と改称されたこの協定は、実際に成果を上げた。2026年4月までにバングラデシュで2000を超える工場の安全改善を監督し、約300ブランドが署名している[48] ✓ 確認済み事実。しかし協定はなお不完全である。アコード自身、数百の工場で危険が是正されていないと報告しており、最近ではミルプールの火災で、施錠された非常口の奥で少なくとも16人が死亡した[48] ✓ 確認済み事実。バングラデシュでの協定は2026年12月31日に期限を迎え、本報告の公表時点で更新交渉が続いている[48]。ラナ・プラザが残した教訓は、したがって両義的である。買い手に課す拘束力と強制力のある義務は、工場の現場を変えうる。崩落以前から存在しながら惨事を防げなかった自主的な行動規範には、それができない。
賃金をめぐる動きはより緩慢である。バングラデシュは2023年12月1日、縫製業の最低賃金を8000タカから1万2500タカに引き上げた。2018年以来初の改定であり、少なくとも2人の労働者が死亡した数週間にわたる抗議行動を経てのことだった[2] ✓ 確認済み事実。労組の要求は2万3000タカだった。グローバル生活賃金連合が2025年に示したバングラデシュ都市部の生活賃金は3万459タカ(月約248ドル)であり、法定最低賃金はその約41%しか賄わない[3] ✓ 確認済み事実。バングラデシュ縫製・産業労働者連盟のカルポナ・アクター会長は、この決着を「非常に失望させられる」と評した[2]。当時のインフレ率は9.5%に達しており、引き上げ分の実質価値はその後目減りしている[2] ◈ 強力な証拠。
- バングラデシュ:最低賃金1万2500タカ(約113ドル)。ダッカの生活賃金は3万459タカ(約248ドル)[2] [3] ✓ 確認済み事実。
- カンボジア:2026年1月1日から縫製業の最低賃金は月210ドル[49] ✓ 確認済み事実。
- ベトナム:2026年1月1日から第1地域の最低賃金は531万ドン(約202ドル)[50] ✓ 確認済み事実。
- スリランカ:2024年3月に全国最低賃金を40%引き上げ、1万7500ルピーと手当に[51] ✓ 確認済み事実。
- エチオピア:ハワサ工業団地での基本給は月約26ドル。推計生活賃金は約110ドル[19] ◈ 強力な証拠。
ウルトラファストのプラットフォームは、別種の労働問題を加える。労働時間である。スイスの団体パブリック・アイは2021年、広州に集まる約1000社のShein取引先のうち17社を訪れた。そこで確認したのは、週75時間、1日11〜12時間の労働と月1日の休日、そして出来高払いだった[27] ✓ 確認済み事実。英Channel 4は2022年10月の調査報道で、2工場における最長18時間のシフトを撮影した。出来高単価は衣服1着当たり0.27元だった[52] ◈ 強力な証拠。Sheinは違反を認め、改善を約束した。パブリック・アイは2023年に再調査を行い、6か所で13人の労働者に聞き取りをした。結果は再び週75時間超の労働だった。Shein自身の行動規範は上限を週60時間と定め、中国の法定上限は週40時間に月36時間の残業を加えた水準である[53] ✓ 確認済み事実。ある労働者は調査員に対し、休みを取る余裕がなくなったと語った[53]。
ウルトラファストのモデルは、リスクをブランドから工房へと移す。注文は小ロットで毎日届き、追加発注の保証はなく、支払いは出来高制である[27] [52]。次の注文を得たい取引先は急な増産を吸収しなければならず、最も安上がりな方法は労働者に無償の融通を強いることだ。Shein自身による監査と、繰り返し確認された週75時間という調査結果は、同じ構造的圧力を別の角度から映している[53] [54]。
Sheinは問題の一部を自ら開示している。2023年のサステナビリティ報告書では、15歳9か月と15歳11か月の労働者が関わる児童労働を2件確認し、該当する取引先への発注を停止した[55] ✓ 確認済み事実。2024年の報告書では、約31万7000人の労働者を対象とする約4300件の監査を経て、さらに2件を開示した[54] ✓ 確認済み事実。沈黙よりは開示のほうが良く、同等の数字を公表する競合はわずかである。しかし監査は自社によるものだ。しかも2024年時点で約5000社に上る外部製造業者の規模を考えれば、その網羅性を第三者が検証するのは難しい[53] ◈ 強力な証拠。
英国の消費者に10億ポンド分を販売し、ロンドン証券取引所への上場を目指す企業でありながら、あなた方が示した証拠の乏しさには、委員会として率直に愕然としている。
――リアム・バーン下院議員(英下院ビジネス・貿易委員会委員長)、2025年1月強制労働は、帳簿のなかで最も監査しにくい項目である。新疆は世界有数の綿花産地だ。米国は2022年6月以降、ウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づき、同地で作られた製品は強制労働によるものと推定している[56] ✓ 確認済み事実。ブルームバーグが2022年に依頼した同位体分析では、米国向けに出荷されたSheinの衣料が新疆産綿花と結び付けられた。Sheinは後に、検査された綿花の一部が同地域産だったとCNBCに認めた[57] ◈ 強力な証拠。2025年1月には、Sheinの欧州担当法務責任者が英議会の委員会に対し、製品に新疆綿が含まれるかどうかの回答を拒んだ[58] ✓ 確認済み事実。執行はなお手薄である。2022年に米国は1850億ドル相当の衣料・繊維・履物を輸入したが、同法に基づいて差し止められたのは約3500万ドルにすぎない[56] ✓ 確認済み事実。圧力が効きうることを示すのがウズベキスタンだ。10年に及ぶボイコットを経て、国際労働機関(ILO)は2021年の綿花収穫に組織的な強制労働はなかったと認定した[59] ✓ 確認済み事実。
消費国も例外ではない。2020年のロックダウン中、英国のネット小売業者に納入するレスターの縫製工房で、時給が3.50ポンドまで下がっていたと調査員が報告した。当時の法定最低賃金は8.72ポンドである[60] ◈ 強力な証拠。米国ではカリフォルニア州の2021年縫製労働者保護法が、2022年1月から出来高払いを禁じ、発注するブランドに未払い賃金の連帯責任を負わせた[61] ✓ 確認済み事実。パンデミックは、リスクが供給網の下流へ流れ落ちる様子もあらわにした。2020年初め、ブランド各社は推計400億ドル分の注文を取り消し、その多くはすでに生産済みだった。クリーン・クローズ・キャンペーンの推計では、労働者はその後1年間で最大118億5000万ドルの賃金と退職手当を失った[62] [63] ◈ 強力な証拠。世論の運動を経て、最終的に約220億ドルが回収された[62]。
解決策が分かっていながら、なぜ格差は続くのか。ブランドは短期契約で数千の取引先から調達しており、単独で賃金を上げた取引先は、上げない取引先に注文を奪われる。問題は個々の工場の選択ではなく、集合行為にある。ラナ・プラザが示したのは、買い手に自らが求める労働条件の費用を負担させる拘束力ある協定によって、この構造を打破できるということだ。アコードによる2000超の工場の点検と改修は、まさにその方法で資金を確保し、履行された[48] [47] ◈ 強力な証拠。カリフォルニア州の連帯責任規定は、同じ論理を米国の一州内で賃金に適用したものである[61] ✓ 確認済み事実。主要輸出国全体で賃金や労働時間を縛る同等の仕組みは、まだ存在しない。そして毎日発注し、取引先が流動的なウルトラファストのモデルは、その構築をいっそう難しくしている。
まず、確信をもって言えることから始めよう。アパレル・インパクト研究所は、2023年のアパレル排出量を9億4400万トン(CO2換算)とした。世界全体の2%近くに当たり、前年比7.5%増で、2019年に追跡を始めて以来初の増加である。同研究所はその要因として、ウルトラファストファッションを含む過剰生産とバージンポリエステルを挙げた[4] ✓ 確認済み事実。マッキンゼーとグローバル・ファッション・アジェンダは、2018年の排出量を約21億トン、比率にしておよそ4%と推計した。そのうち約70%は、素材の生産と加工という上流工程で発生する[20] ✓ 確認済み事実。衣料と履物を合わせて計算したクアンティスは約8%とした[5] ◈ 強力な証拠。この開きは誤差ではなく、算定範囲と手法の違いを反映している。そして3者とも、影響の大半はアジアの工場と繊維生産に集中しており、買い手の店舗やクローゼットにあるのではないという点で一致する。
ウルトラファストファッションの影響は、企業データにはっきりと表れている。Sheinが報告した排出量は、2022年の917万トンから2023年には1668万トン(CO2換算)に増えた[46] ✓ 確認済み事実。2024年には輸送部門だけで13.7%増の852万トンに達し、Zaraを擁するInditexが報告した261万トンの3倍を超えた[28] ✓ 確認済み事実。理由は航空輸送にある。Sheinは150を超える市場の顧客へ、主に空路で商品を送っている[64] ◈ 強力な証拠。2024年のサステナビリティ報告書を取り上げた報道は、総排出量を23.1%増の2620万トンとしたが、報道によってスコープの合算方法が異なる[65] ⚖ 議論あり。Sheinは科学的根拠に基づく目標イニシアチブ(SBTi)の承認を受けた排出削減目標を持ち、2030年までにスコープ3排出量を2023年比で25%減らすとしている[28]。同社のドナルド・タン執行会長はロイターに対し、取り組みの速度がまだ十分ではないと認めた[28]。
水は、帳簿のなかで最も誤って伝えられてきた項目である。綿Tシャツ1枚を作るのに2700リットルの水が要るという数字は、世界自然保護基金(WWF)のキャンペーンに由来する。その根拠は、仕上がった綿織物1キロ当たり約1万1000リットルという、ウォーターフットプリントの平均値だった[25] ◈ 強力な証拠。そのフットプリントの内訳は、灌漑用水が約45%、畑で蒸発する雨水が41%、汚染を希釈するのに必要とされる名目上の水量が14%である[25]。綿花の研究者たちは、意味のある世界平均など存在しないと主張する。生産条件は天水農地から砂漠の灌漑農地まで多様であり、シャツ1枚当たりの推計値も2000リットルから2万リットルまで開きがあるからだ[26] ◈ 強力な証拠。国連が引用する推計では業界の総水使用量は年間930億立方メートル[21]、2020年に英科学誌『ネイチャー・レビューズ・アース・アンド・エンバイロンメント』に掲載された総説では79兆リットルとされる[6] ◈ 強力な証拠。
乾燥地で綿花を灌漑すれば、破滅的な結果を招きうる。その典型例が今もアラル海である。国連によれば、危機の発端は1959年、ソ連が中央アジアを綿花供給地に指定したことだった。1980年までに同地域の生産ノルマは900万トンに達し、灌漑のためにアムダリヤ川とシルダリヤ川の水を転用した結果、かつて世界で4番目に大きかった湖が縮小した[66] ✓ 確認済み事実。政策上の教訓は、水への影響が地域的なものだという点にある。テキサスの畑に降る1リットルの雨と、中央アジアで枯渇しかけた帯水層から汲み上げる1リットルとは等価ではない。世界平均は、綿花が最も深刻な被害をもたらす場所をこそ覆い隠してしまう[26] ◈ 強力な証拠。
染色・仕上げ工程による汚染は、世界規模よりも地域単位でよく記録されている。「繊維の染色が、産業由来の水質汚染の20%を占める」という広く流布した主張は世界銀行に帰され、国連の広報資料にも出典なしで登場する[21]。しかし、その根拠となる世界銀行の調査は一度も公表されていない⚖ 議論あり。地域レベルの証拠はより明確である。バングラデシュ環境局は、ダッカ周辺の河川が国の水質基準を満たしておらず、主な原因は主に繊維・皮革加工に由来する産業排水だと報告している。複数の河川では重金属が危険な水準に達している[16] ◈ 強力な証拠。多くの工場には書類上は排水処理施設があるものの、稼働には費用がかかる。利益率が薄いときほど、停止させる動機は強くなる[16]。
化学物質は帳簿に加わった最も新しい項目であり、買い手にとっては最も身近な問題である。撥水・防汚加工に使われる有機フッ素化合物(PFAS)は、国際NGOのIPENが2023年に13か国で検査した衣類72点中46点から検出され、子ども向け製品も含まれていた。もっとも同じ調査で、防水ジャケット21着はPFASを使わずに作られていた[70] ✓ 確認済み事実。環境医学者ハンス=ペーター・フッターは2025年のグリーンピースの検査結果について、PFASは免疫系を弱め、代謝やホルモンバランスを乱しうると述べた。EUは化学物質規制REACHの下で、PFASとフタル酸エステル類をいずれも制限している[68] ◈ 強力な証拠。問題が放置される背景には法的な空白がある。プラットフォームが中国からEUの買い手へ直送する場合、輸入者とみなされるのは買い手自身だ。そのため本来なら欧州の小売業者が負うべき義務は、それを果たしうる誰にも課されない[68] ◈ 強力な証拠。
- 排出:約70%は、繊維生産、紡糸準備、染色、仕上げといった上流工程で発生する[20] ✓ 確認済み事実。
- 繊維:ポリエステルだけで年間約7800万トンに上り、うち88%が化石燃料由来のバージン原料である[1] [11] ✓ 確認済み事実。
- 輸送:Sheinの2024年の輸送部門排出量は、航空輸送を主因として850万トンを超えた[28] [64] ✓ 確認済み事実。
- 化学物質:IPENが13か国で検査した衣類サンプルの64%からPFASを検出[70] ✓ 確認済み事実。
神話を取り除いても、環境勘定は依然として深刻である。ファッションは地球上で2番目に汚染度の高い産業ではない。排出比率も、よく引用される10%より2〜4%に近い[24] [4] [20] ◈ 強力な証拠。しかし業界は2018年、「気候行動のための国連ファッション産業憲章」を通じて2030年までに排出量を大幅に削減すると約束した[71]。にもかかわらず、2023年には排出量が再び増加に転じていた[4] ✓ 確認済み事実。UNEPのインガー・アンダーセン事務局長は2025年3月、持続不可能なファッションが「気候変動、自然・土地・生物多様性の喪失、汚染と廃棄物という地球の三重危機」を悪化させていると警告した[7]。誓約と実際の軌道との隔たりこそ、本章における最も重要な環境上の事実である。
服はどこへ行くのか
埋立地、砂漠の投棄場、そして古着の国際取引
EUでは2022年に694万トンの繊維廃棄物が発生し、家庭から出た繊維廃棄物の85%は分別回収されなかった[13]。回収された分も多くが輸出され、その相当部分は到着した時点で廃棄物となる✓ 確認済み事実。
衣服が寿命を終える段階は、帳簿の中で最も見えにくい部分である。そして「リサイクル」と最も頻繁に誤って説明される部分でもある。エレン・マッカーサー財団によれば、衣料の製造に使われた素材のうち、新たな衣料へと再生されるのは1%に満たない[10] ✓ 確認済み事実。EUでは2022年、繊維廃棄物が694万トン、1人当たり16キロに達した。家庭由来の繊維廃棄物で分別回収されたのは15%にすぎず、残りは家庭の混合ごみとして処理された。焼却される比率は2010年の10%から2022年には14%に上昇した[13] ✓ 確認済み事実。米国では、環境保護庁(EPA)の最新データによると、2018年に廃棄された繊維は1703万米トンで、1960年の176万米トンから大きく増えた。うち1130万米トンが埋め立てられ、リサイクル率は14.7%だった[72] ✓ 確認済み事実。
回収は再利用を意味しない。EUは2023年に140万トンの使用済み繊維を輸出した。2000年の輸出量55万トンのほぼ3倍である[13] ✓ 確認済み事実。欧州の選別施設は、域内で利益を出して再販できるごく一部を抜き出す。残りは梱包され、アフリカ、アジア、中南米の業者へ送られる。衣服の品質が落ち、量が増えるにつれて、この仕組みの採算は悪化してきた。英国の資源循環団体WRAPによれば、回収ボックスで集められた素材の価値は、2013年の1トン当たり406ポンドから2023年には172.5ポンドに下落した[73] ✓ 確認済み事実。繊維リサイクル協会のアラン・ウィーラーはWRAPに対し、「ファッションの品質は低下し、市場に出回る繊維製品の量は増え続けている」と語った[73]。
ガーナの首都アクラにあるカンタマント市場は、世界で最もよく研究された古着の行き先である。毎週約1500万点の古着が到着する。市場の商人と連携するオア財団は約40%が廃棄物として市場を出ると推計し、グリーンピース・アフリカは2024年、ほぼ半数が売り物にならないと報告した[74] [17] ◈ 強力な証拠。毎週最大50万点が空き地や非公式の投棄場に行き着く[17]。グリーンピースがアクラ市内3か所の投棄場で採取した衣類164点のうち、89%から合成繊維が見つかった。廃棄衣料を燃料として燃やす洗濯場の空気からは、発がん性物質のベンゼンも検出された[17] ✓ 確認済み事実。2025年1月にはカンタマントを火災が襲い、約8000人の商人が被害を受けた[75] ✓ 確認済み事実。グリーンピース・アフリカのヘレン・デナは、この調査結果を「グローバル・ノースが無謀に押し付けた環境不正義の厳然たる実例」と評した[17]。
ケニアにも同様の流れが押し寄せている。チェンジング・マーケッツ財団は2023年、2021年にケニアへ届いた古着は9億点を超えると推計した。そのうち3点に1点以上がプラスチックを含み、品質が極めて悪いため、到着した時点で廃棄物になったという。EUだけでも、こうした品を年間約3700万点送り出していた[76] ◈ 強力な証拠。一方で、同じ取引がケニアで約200万人の生計を支えている[76] ✓ 確認済み事実。この緊張関係こそ、古着輸出の規制が難しい理由である。東アフリカ共同体が2016年に古着輸入の段階的廃止を打ち出した際、米国が貿易上の優遇措置の停止をちらつかせると、ルワンダを除く全加盟国が撤回した。2025年にも米通商代表部(USTR)は、ケニアの古着政策を貿易障壁として改めて問題視した[77] ✓ 確認済み事実。
チリでは、廃棄物は宇宙からも見える。イキケの自由貿易区を通じて、毎年約5万9000トンの古着や売れ残りの衣料が流入する。AFP通信は2021年、少なくとも3万9000トンがアルト・オスピシオ近郊のアタカマ砂漠の投棄場に行き着いていると報じた。自治体の埋立地が、生分解されない素材の受け入れを拒むためである[18] ✓ 確認済み事実。2025年9月、環境裁判所はチリ国家に損害の責任があると認め、修復計画の策定を命じた。国は控訴し、本稿執筆時点で判決は確定していない[78] ◈ 強力な証拠。アタカマの事例は、ファッションの連鎖の終点が誰かが支払うべき費用を生んでいることを、法的に最も明確に認めたものである。
古着取引はしばしば「再利用」と説明される。しかしアクラ、モンバサ、アタカマから得られた証拠は、その相当部分が別の名目で輸出された廃棄物であることを示している[17] [76] [18]。法的には廃棄物ではなく中古品に分類されるため、こうした貨物は廃棄物輸出に適用される規制を免れる。余剰品を選別し、燃やし、埋める人々は、この連鎖の最後に位置し、最も報われない労働者である。
この流れを生み出す国々の間では、消費の傾向が大きく異なる。ただしデータは同じ基準で比較できるものではない。以下の数値はキロ単位と点数が混在し、年次も異なる。したがって順位としてではなく、規模の目安として読むべきである。
- EU:2022年の1人当たり繊維製品購入量は19キロ、繊維廃棄物は1人当たり16キロ[13] ✓ 確認済み事実。
- フランス:2024年に新品繊維製品35億点が販売され、国民1人当たり新品衣類42点に相当[14] ✓ 確認済み事実。
- 英国:2022年に142万トンの繊維製品が購入され、71万1000トンが残渣ごみとして処理された。うち84%は焼却[73] ✓ 確認済み事実。
- 日本:2024年に家庭が購入した衣類は77万トン、手放した衣類は48万トン。供給される衣類の98%が輸入品である[15] [79] ✓ 確認済み事実。
- ドイツ:グリーンピースの調査では、1人当たり年間約60着の新しい衣服を購入し、うち18%は2回しか着用されない[80] ◈ 強力な証拠。
- 中国:2020年の繊維廃棄物は約2200万トンで、リサイクル率はおよそ20%[81] ◈ 強力な証拠。
目標を掲げた政府にとってさえ、削減がいかに難しいかを示すのが日本である。環境省の推計では、国内には毎年約35億着の衣類が供給され、毎日大型トラック約130台分の衣類が焼却または埋め立てられている[79] ✓ 確認済み事実。政府は家庭から出る衣類廃棄物を2030年度までに2020年度比で25%削減する目標を掲げる。だが2024年までの進捗は2%に届かず、2026年1月に行動計画の策定が始まった[15] ✓ 確認済み事実。世界最大の生産国である中国は2022年、廃繊維のリサイクル率を2025年までに25%、2030年までに30%とする目標を定めた[81] ◈ 強力な証拠。もっとも、2025年の実績については、検証された数値がまだ公表されていない。
ファッションの歴史の大半において、規制が業界に及ぶのは周縁部に限られていた。生産国では工場の安全、消費国では化学物質の基準値である。この構図は2024年から2026年にかけて変わった。フランスの反ファストファッション法案は2025年6月10日、上院で賛成337、反対1で可決された[83]。そして2年を超える審議を経て、2026年6月30日に議会で最終的に成立した[82] ✓ 確認済み事実。2026年9月1日以降、ウルトラファストのプラットフォームは、靴下の0.25ユーロからコートの12ユーロまでの課徴金を支払っている。上限は税抜価格の50%で、徴収はフランスの繊維製品の生産者責任組織Refashionが担う[32] ✓ 確認済み事実。同法はまた、対象となるプラットフォームについてインフルエンサーによる宣伝を含む広告を禁じ、修理や再利用を促す表示を義務付けている[84] ✓ 確認済み事実。
フランスの法律は、意図的に対象を絞っている。議会審議の過程で対象はファストファッション全体からウルトラファストのプラットフォームへと狭められ、Zara、H&M、そしてフランスのブランドは外れた[84] [82] ✓ 確認済み事実。この選択は二方向からの批判を招いた。Sheinは、規定がデジタルサービスと電子商取引に関するEU規則と抵触すると主張する。欧州委員会も、広告禁止や小包に関する規定がEU法と両立するかどうか疑問を呈している[82] [85] ◈ 強力な証拠。中国商務省は同法を「差別的であり、貿易障壁だ」と批判した[32]。フランス政府の位置付けは異なる。セルジュ・パパン中小企業担当相は、問題は衣服にとどまらず、フランスが守りたい社会のあり方それ自体だと述べた[82]。2030年以降の課徴金額については1点当たり10ユーロから20ユーロまで報道に幅があり、施行令で決着する見通しである⚖ 議論あり。
EUの手法は、より包括的だが歩みは遅い。加盟国は2025年1月1日から繊維製品の分別回収を義務付けられている。2025年10月17日に発効した改正廃棄物枠組み指令は、全加盟国に対し、30か月以内に繊維製品の拡大生産者責任(EPR)制度を設けるよう求めている。対象は、域外のオンライン販売業者を含め、EU市場で販売する全ての生産者である[88] ✓ 確認済み事実。負担金は耐久性に応じて調整される仕組みで、原理的には長持ちする衣服が有利になる[88]。持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)により、大企業は2026年7月19日から売れ残った衣料品と履物を廃棄できなくなり、中堅企業も2030年に続く[45] ✓ 確認済み事実。繊維製品のデジタル製品パスポートの導入は、早くても2028年になる見通しである[89] ◈ 強力な証拠。
環境法が果たせなかった役割を、消費者法とプラットフォーム規制が担っている。2025年7月、フランスの競争・消費者当局は、Sheinが宣伝した値引きの57%が実際の値下げではなかったとして、同社に4000万ユーロの制裁金を科した[44] ✓ 確認済み事実。2026年6月には、さらに2250万ユーロの制裁金が続いた[40]。2025年5月には、ベルギー、フランス、アイルランド、オランダが主導するEU消費者保護当局のネットワークが、Sheinのサイトで偽の値引き、虚偽の期限表示、誤解を招く環境主張を確認した[90] ✓ 確認済み事実。アイルランド競争・消費者保護委員会のパトリック・ケニーは、消費者は偽の期限や偽の値引きに急かされることなく買い物ができるべきだと述べた[90]。7月には、欧州委員会がDSAに基づくTemuへの暫定判断を示した[43] ✓ 確認済み事実。
米国は主に、環境政策ではなく通商政策を通じて動いてきた。Shein自身の届出書類が認めるとおり、2025年のデミニミス廃止は、米市場でウルトラファストファッションの勢いをそぐうえで、他のどの措置よりも効果があった[29] [37] ✓ 確認済み事実。州レベルでは、2024年9月に署名されたカリフォルニア州のSB 707が、全米初の繊維EPR制度を創設した。生産者は2026年7月から認可を受けた生産者責任組織への加入を義務付けられ、2030年までに罰則が適用される[87] ✓ 確認済み事実。大手ブランドに供給網の把握を求めるニューヨーク州のファッション持続可能性・社会的説明責任法案は、2022年以降繰り返し提出されているが、成立していない[91] ✓ 確認済み事実。英国には、2026年10月時点で繊維EPR制度がまったく存在しない[92] ✓ 確認済み事実。
| 政策手段 | 実効性リスク | 評価 |
|---|---|---|
| ブランドの自主的誓約 | 2018年に国連憲章で約束したにもかかわらず、業界の排出量は2023年に7.5%増加した[4] [71]。強制力のない誓約は、増加曲線を曲げられていない。 | |
| 拡大生産者責任 | EPRは回収と選別の資金源となる。しかし負担金が低すぎれば、量を減らすどころか廃棄物の輸出に資金を回すことになる[88] [13]。 | |
| プラットフォーム対象の課徴金 | フランスの法律はSheinとTemuには及ぶが、従来型のファストファッションには及ばない。EU法との整合性も争われている[82] [85]。 | |
| 関税・小包課税 | これまでで最も即効性のある手段である。ただし通商措置であり、労働、化学物質、廃棄物には直接対処しない[34] [41]。 | |
| 環境主張の取り締まり | 取り締まりの成果は、多額の制裁金ではなく、誓約書の提出や表示の停止にとどまる。米国での訴訟は不調に終わった[93] [94]。 |
このリスク表からは、一つの傾向が読み取れる。企業行動を素早く変えた手段、すなわち関税、アコード、消費者法に基づく制裁金は、特定の企業による特定の行為に費用を結び付けている。体系的な変化を約束する手段、すなわち誓約、表示、リサイクル目標は、これまでほとんど何も変えていない。EPRは、後者を前者のように機能させられるかを試す試金石である。フランスとEUの負担金が十分に高く、耐久性に応じて大胆に差を付けられれば、設計上の判断は変わるだろう。事務手数料程度の水準に設定されれば、回収の資金を賄うだけで、量は増え続けることになる[88] [32] ◈ 強力な証拠。
持続可能な代替策
再生繊維、リセール、レンタル、環境ラベルについて証拠が語ること
再生ポリエステルの98%は古着ではなくペットボトルから作られており、市場に占める再生ポリエステルの比率は2024年に12%へ低下した[1]。「持続可能」として売り出される代替策は、真に有益なものから、ほぼ見せかけにすぎないものまで幅がある◈ 強力な証拠。
最も広く売り込まれている代替策は再生ポリエステルだが、データは芳しくない。テキスタイル・エクスチェンジによれば、再生ポリエステルの量は2023年から2024年にかけて890万トンから930万トンに増えた。しかしバージンポリエステルがより速く伸びたため、ポリエステル全体に占める比率は12.5%から12%に下がった[1] ✓ 確認済み事実。さらに再生ポリエステルの98%は繊維ではなくペットボトルから作られている。消費前と消費後を合わせても、繊維から繊維へのリサイクルは繊維市場の1%に満たない[1] ✓ 確認済み事実。ボトルをシャツに変えれば、繰り返し循環できるボトルからボトルへの輪から素材を抜き出し、二度とリサイクルされることのない衣服へと移すことになる。したがって再生素材の使用は、衣料の循環経済というより、プラスチックの一方通行の迂回路と呼ぶほうが正確である。
輪を閉じる技術である繊維から繊維へのリサイクルは、商業面で苦戦してきた。スウェーデンのRenewcellは2022年、着古した綿を新たなパルプに再生する世界初の商業規模工場を稼働させた。だが生産品の買い手を十分に確保できず、2024年2月に破産を申請した。資産は後に買収され、Circuloseの名で再出発している[95] ✓ 確認済み事実。障害はよく知られている。安価には分離できない混紡繊維、原料を汚染する染料や仕上げ剤、そしてバージンポリエステルとの価格差である。ウルトラファストファッションには、この価格差を維持するあらゆる動機がある。Sheinは、直接調達する再生ポリエステルの12.1%が繊維から繊維へのリサイクルに由来すると報告している。意味のある数字だが、同社の総生産量から見ればごく一部にしか当てはまらない[65] ◈ 強力な証拠。
商業的な勢いが最も強い代替策はリセールである。ThredUpがGlobalDataと共同で作成した2026年の報告書は、2025年に米国の中古衣料販売が19%伸びたと推計し、世界の中古市場が2030年までに約3930億ドルに達すると予測する[98] ◈ 強力な証拠。2021年に『エンバイロメンタル・リサーチ・レターズ』誌に掲載されたジーンズのライフサイクル研究は、長く使い続けることを最も環境負荷の低い選択肢とし、リセールを2位に位置付けた。リサイクルはそれより下位である[99] ✓ 確認済み事実。難点はリバウンド効果にある。買い手がリセールを、より多くの服を速く入れ替える手段とみなせばどうなるか。転売できるからと新品をさらに買うなら、生産への正味の効果はわずか、あるいはマイナスになりうる[97] ⚖ 議論あり。この問いに関する証拠はまだ乏しく、その一部は答えに利害を持つプラットフォーム自身が作成したものである[96]。
所有からの最も根本的な決別として売り込まれるレンタルは、ライフサイクルの証拠では最も成績が悪い。前述の2021年の研究では、評価した全シナリオの中で、レンタルの地球温暖化係数が最も高くなりうることが分かった。レンタルのたびに、所有する服なら不要な輸送、包装、ドライクリーニングが加わるからである[99] ✓ 確認済み事実。この結果は、あらゆるレンタル事業を否定するものではない。しかし宣伝の多くが拠って立つ直観を覆す。ライフサイクルの証拠が一貫して評価するのは、最も単純な対策、つまり服を長く着ることである。WRAPは、衣服の使用期間を9か月延ばせば、炭素、廃棄物、水のフットプリントがそれぞれ20〜30%減ると推計している[100] ◈ 強力な証拠。
解決策は古着取引を止めることではなく、改革することだ。リサイクルだけでこの問題から抜け出すことはできない。
――ジョージ・ハーディング=ロールズ(チェンジング・マーケッツ財団)、2023年2月最も弱い環は、環境ラベルであることが明らかになった。チェンジング・マーケッツ財団は2021年、12ブランドの4000点を超える製品を調べ、環境主張の59%が英国の指針に違反しているか、根拠を欠いていると結論づけた。H&Mに至っては96%が該当した。同社の「コンシャス」ラインは、合成繊維の比率が72%と、メインコレクションの61%を上回っていた[101] ◈ 強力な証拠。2022年にはノルウェー消費者庁が、ヒッグ素材持続可能性インデックスに基づく環境スコアを誤解を招くものと判断し、スコアは世界中で消費者向けの使用が取りやめられた[86] ✓ 確認済み事実。英国の競争・市場庁(CMA)は2024年3月、ASOS、Boohoo、そしてアズダの衣料ブランド「ジョージ」から、環境主張をより明確にするとの誓約を取り付けた。違反の認定は伴わなかった[93] ✓ 確認済み事実。米国では2023年、H&Mのコンシャス・マーケティングをめぐる訴訟が棄却または取り下げとなった[94] ✓ 確認済み事実。
市場型代替策を支持する論拠
2021年のライフサイクル研究は、単に服を長く持ち続けることに次いで、リセールを2番目に負荷の低い選択肢と位置付けている[99]。
Depopの利用者は、中古品購入の64〜72%が新品の購入に取って代わったと回答している[96]。
ホット・オア・クール研究所による「充足」の推計は、この議論で最も居心地の悪い数字である。同研究所は2022年の分析で、気温上昇を1.5度に抑えるには、新しい衣服は1人当たり年平均約5着が上限だと結論づけた。G7諸国の消費者は、ファッション消費を約80%減らす必要があるという[102] ◈ 強力な証拠。2024年にフランスで1人当たり42点の新品衣類が購入されたことと比べれば[14]、この差は再生繊維やリセールのプラットフォームだけで埋められるものではない。だからといって代替策に価値がないわけではない。代替策の価値は量の削減を置き換えることにではなく、削減を下支えすることにある。
こうして証拠は、代替策を明確な順に並べる。服を長く着ること、修理すること、地域で譲り渡すことが最も強く支持されている[99] [100] ✓ 確認済み事実。リセールは、新品の購入を実際に置き換えるなら有益であり、買い替えを加速させるなら有害である。現時点の証拠では、どちらの効果が勝るかはまだ判断できない[97] [96] ⚖ 議論あり。ボトル由来の再生ポリエステルは循環上の利点に乏しく、繊維から繊維へのリサイクルも商業的にはまだ盤石ではない[1] [95] ✓ 確認済み事実。レンタルと環境ラベルは、最も実績が弱い[99] [101] ◈ 強力な証拠。価格も当てにならない。リーズ大学による2023年の研究では、衣服の小売価格から耐久性は予測できなかった[103] ◈ 強力な証拠。
第一の結論は、安い服の本当の代償が現実に存在し、計測可能で、大半が価格の外にあるということだ。主要輸出国の労働者は、法的に生活賃金の半分を大きく下回る額しか支払われていない[3] [19] ✓ 確認済み事実。業界の排出量は、信頼できる推計のうち最も保守的なものでも年間10億トン近くに上り、なお増えている[4] ✓ 確認済み事実。毎年9200万トンを超える繊維が廃棄され、新たな衣料へ再生される衣料素材は1%に満たない[7] [10] ✓ 確認済み事実。ウルトラファストファッション製品の独立検査では、法定基準値を超える化学物質が繰り返し見つかっている[68] [69] ◈ 強力な証拠。10ドルのワンピースの買い手は、これらの費用をどれも支払っていない。
第二の結論は、ウルトラファストファッションが新しい仕組みではなく、既存の仕組みを加速させたものだということだ。それが強めた傾向、すなわち生産量の増加、利用率の低下、合成繊維への移行は、いずれも2014年までに顕在化していた[10] [11] ✓ 確認済み事実。SheinとTemuが加えたのは速度、データに基づく品ぞろえ、そして小包直送の流通モデルである。このモデルは2025年まで、従来型の輸入業者が払う関税を免除されていた[36] [37] ✓ 確認済み事実。フランスの法律がプラットフォームだけに焦点を当てていることが、法的にも環境面でも異議を招きうるのはこのためである。プラットフォームはこのモデルの最も極端な表れだが、量の大半はなお従来型のファストファッションが占めている[84] [82] ◈ 強力な証拠。
- 量に値段を付ける:耐久性と修理可能性に応じて大胆に差を付けたEPR負担金を、国外のプラットフォームを含め、市場で販売する全ての生産者に課す[88] ◈ 強力な証拠。
- 買い手に責任を負わせる:アコードとカリフォルニア州のSB 62を手本に、安全だけでなく賃金と労働時間についても拘束力ある協定と連帯責任ルールを設ける[48] [61] ◈ 強力な証拠。
- 小包の抜け穴をふさぐ:消費者直送型プラットフォームを、化学物質、安全、関税の各制度上で輸入者として扱う[68] [41] ◈ 強力な証拠。
- 廃棄物の輸出を規制する:未選別で売り物にならない古着は、中古品ではなく廃棄物に分類する[76] [17] ◈ 強力な証拠。
- データを正す:企業が選んだ指標に代えて、生産量、排出量、取引先リストについて監査済みで比較可能な開示を求める[29] [33] ◈ 強力な証拠。
第三の結論は、どの政策が機能するかに関わる。企業行動を素早く変えた改革は、具体的で強制力があり、特定可能な主体に結び付いていた。ラナ・プラザ後のアコード、カリフォルニア州の連帯責任規定、デミニミスの廃止、フランスにおける消費者法上の制裁金がそれである[48] [61] [34] [44] ✓ 確認済み事実。行動を変えられなかった公約は、一般的で自主的なものだった。気候誓約、サステナビリティ表示、そして再生素材の目標である。再生素材は絶対量では増えたが、拡大する市場の中でシェアは縮んだ[4] [1] [101] ✓ 確認済み事実。拡大生産者責任は、いま、両類型の中間に位置する。それが機能するかどうかは、制度の有無ではなく負担金の水準で決まる。
第四の結論は、数字自体の誠実さに関わる。ファッションが2番目に汚染度の高い産業だという神話や、世界の温室効果ガスの10%を排出するという神話は、業界に批判をかわす安易な口実を与えてきた[23] [24] ✓ 確認済み事実。擁護可能な数字だけでも、事態は誇張なしに十分深刻である。より保守的な推計で排出量の約2〜4%、2023年に再び増加した業界排出量、ポリエステルが占める繊維の59%、そして生活賃金の41%にとどまるバングラデシュの最低賃金がそれだ[4] [20] [1] [3] ✓ 確認済み事実。反論の余地がある帳簿よりも、監査に耐える帳簿のほうが、規制の基盤としてはるかに強固である。
本報告で検証したあらゆる代替策は、新たに作られる衣服の総数を減らすときに最もよく機能し、その数の増加を許すときに最も機能しない[99] [97] [1]。1点当たりの効率はいくつかの面で改善したが、生産量はそれを上回る速さで増えた。EPR負担金、法的責任、関税を通じて量に値段を付ける政策の枠組みは、原因に対処する。個々の衣服を完璧にしようとする枠組みが対処するのは、症状にすぎない。
最後の結論は、この帳簿の支払いが始まりつつあるということだ。米国が免税小包を廃止してから1年足らずで、Sheinは四半期赤字に転落した[34] ✓ 確認済み事実。フランスはいま、ウルトラファストのプラットフォームに対し、販売する商品1点ごとに課金している[32] ✓ 確認済み事実。EUは売れ残り衣料の廃棄を禁じ、全ての少額小包に関税を課し、繊維の生産者に自らが生む廃棄物への責任を負わせた[45] [41] [88] ✓ 確認済み事実。チリの裁判所は、捨てられた衣服で埋まった砂漠について国家の責任を認めた[78] ◈ 強力な証拠。いずれもまだ量の増加を反転させてはいない。しかしそれは、史上最も安い衣服が、あたかも費用など存在しないかのように売られてきた時代の終わりを告げている。